家族が寝静まり、家全体が静寂に包まれる深夜。どこからともなく聞こえてくる「ゴーッ」という低い音に、ふと眠りから覚めた経験はないでしょうか。音の正体を探してたどり着いたトイレの前で、誰も使っていないはずの便器から響くその音に、少し不気味な感覚を覚えたかもしれません。しかし、これは心霊現象などではなく、れっきとした機械的なトラブルのサインであり、その原因はトイレタンクの内部に潜んでいます。 この「ゴー」という音は、トイレタンクが自動的に給水を行っている音です。問題なのは、なぜ誰もレバーを操作していないのに給水が始まるのか、という点です。その答えは、タンク内に溜められた水が、気づかないうちに便器の中へと少しずつ漏れ出していることにあります。タンクの底には、排水口をピタリと塞ぐためのゴム製の栓(フロートバルブ)がありますが、これが長年の使用によって劣化し、硬くなったり変形したりすると、その密閉機能が失われてしまうのです。 劣化したゴム栓と排水口の間にできた、目には見えないほどのわずかな隙間。そこから、まるで点滴のように、一滴また一滴と水が便器へと漏れ続けます。そして、何十分、あるいは何時間かかけてタンクの水位がゆっくりと下がっていき、給水装置が作動する水位に達した瞬間、失われた水を補うために一気に給水が開始されます。この、深夜の静寂を破る突然の給水こそが、「ゴー」という異音の正体なのです。 この現象は、水道料金の無駄遣いはもちろんですが、私たちの睡眠の質にも影響を与えかねません。一度気になり始めると、次もまた鳴るのではないかと耳を澄ましてしまい、なかなか寝付けなくなることもあります。また、異音はタンク内の部品が限界に近いことを知らせる警告でもあります。放置すれば劣化はさらに進み、やがては水が止まらなくなるなどの、より深刻な水漏れトラブルに発展する可能性も否定できません。 トイレの「ゴー」という音は、単なる騒音ではなく、家計と安眠を守るためにすぐに対処すべき問題のサインです。原因であるゴム部品の交換は、比較的簡単な修理で済みます。もし深夜の異音に悩まされているなら、見て見ぬふりをせず、早めに専門家へ相談することをお勧めします。