あれは忘れもしない、去年の夏の終わり頃でした。最初は腕にできた小さな赤いポツポツ。蚊に刺されたのだろうと、軽く考えていました。しかし、その痒みは尋常ではなく、夜も眠れないほど。しかも、日を追うごとに刺されたような跡が増えていくのです。二の腕、首筋、足首…特徴的なのは、一直線に並んでいたり、数カ所かたまって刺されていることでした。インターネットで症状を検索し、恐れていた「トコジラミ」ではないかという疑念が確信に変わりました。血の気が引く思いでした。どこから持ち込んだのか?旅行にも行っていないし、心当たりが全くありません。それでも現実は目の前にあります。まずは自分でできる限りの対策を始めました。毎日のシーツ交換、布団乾燥機、掃除機がけ。マットレスの縫い目を丹念に調べると、黒いインクのシミのような糞の跡と、数ミリの茶色い虫を発見。間違いありませんでした。市販のくん煙剤も試しましたが、効果は一時的。彼らは驚くほどしぶとく、家具の隙間や壁紙の裏、コンセントの中など、あらゆる場所に潜んでいるようでした。夜、電気を消すと、どこからともなく現れる気配に怯え、精神的に追い詰められていきました。睡眠不足とストレスで、日常生活にも支障が出始めました。もう自分だけでは限界だと悟り、最終的には専門の駆除業者に依頼することに決めました。費用は決して安くはありませんでしたが、プロの徹底的な調査と薬剤散布、加熱処理などを経て、ようやく悪夢のような日々から解放されました。業者の方からは、最近は海外からの荷物や中古家具など、思いがけない経路で持ち込まれるケースも増えていると聞きました。この経験を通して、トコジラミの恐ろしさと、早期発見、専門家への相談の重要性を痛感しました。もし同じような症状に悩んでいる方がいたら、躊躇わずに専門機関に相談することをお勧めします。あの痒みと不安から解放されることが、何より大切ですから。